経営者の再起 / 代表取締役の自己破産

代表取締役が自己破産したら会社は?退任と選び直し、登記・許可の手続き

社長が破産しても、 会社は続けられる。

この記事で分かること

  • 社長が破産手続開始の決定を受けると、取締役・代表取締役を退任する
  • 株主総会で選び直せば、手続き中でも社長に戻れる。役員の変更は2週間以内に登記する
  • 建設業など許可が要る業種は、役員が復権するまで許可に響く。会社と社長のお金のやりとりは弁護士に一覧で見せる

社長が自己破産しても、会社が自動的に潰れるわけではありません。会社と社長個人は別の人だからです。ただし、社長が破産手続開始の決定を受けると、その時点で取締役(代表取締役)を退任します。会社を続けるなら、株主総会で取締役に選び直し、代表取締役も選び直したうえで、2週間以内に登記をします。

この記事は、会社は続けたまま社長個人が自己破産する、という場面に向けて書いています。会社の借入の保証で社長だけが破産する場合などです。退任から選び直しまでの手続き、許可が要る業種で起きること、会社と社長のお金の分け方を、公的資料と判例をもとに整理しました。会社も一緒に破産する場合は、法人破産と代表者の自己破産を先に読んでください。

社長が破産すると、取締役は一度退任する

会社と取締役の関係は、委任の契約です。中小企業基盤整備機構のJ-Net21は「自己破産者でも再び会社は設立できますか?」の回答で、取締役が破産手続開始の決定を受けると委任関係が終わり、取締役は退任すると説明しています。代表取締役は取締役の中から選ばれるので、取締役でなくなれば代表取締役の地位も終わります。

古い裁判例も同じ考え方です。裁判所の判例集に載っている判決は、破産宣告(いまの破産手続開始の決定)を受けた人は、民法653条に照らして取締役、したがって代表取締役を当然に退任するとしました。

選び直せば、破産の手続き中でも社長に戻れる

退任しても、もう一度選ばれれば取締役に戻れます。J-Net21は、すぐに株主総会を開いて再度取締役に選任できると説明しています。2006年施行の会社法で、破産した人は取締役の欠格事由から外れました。

上の判決も、破産した人が株主総会で取締役に、取締役会で代表取締役に選び直され、本人が承諾して新しい委任関係ができた以上、その就任は適法だとしています。

選び直すまでの流れは、次のとおりです。

順番 すること 確かめること
1 破産手続開始の決定の日を確かめる 退任の日はこの日になる。弁護士から決定の写しを受け取る
2 株主総会で取締役を選ぶ 社長が株主でもある場合、株式も破産の手続きで財産として扱われることがある。誰がどう議決権を使うかは弁護士に確かめる
3 代表取締役を選ぶ 取締役会がある会社は取締役会で、ない会社は定款の定めに従う
4 役員の変更を登記する 退任と就任を、変更が起きた時から2週間以内に申請する

登記の期限は法務省が案内しています。「役員の変更の登記を忘れていませんか?」によると、株式会社の役員の変更の登記は事由が起きた時から2週間以内に申請します。怠ると、代表取締役が100万円以下の過料に処される可能性があります。申請書の様式は法務局の「商業・法人登記の申請書様式」にあります。添付する書類は場合によって変わるので、法務局か司法書士に確かめてください。

取締役が社長1人だけの会社では、社長の退任で取締役が誰もいなくなります。その間は契約の締結や支払いの判断を会社として行う人がいなくなるので、開始決定の日より前に、弁護士と段取りを決めておいてください。

許可が要る業種は、選び直しても終わらない

会社法では選び直せても、業種の許可は別の法律で決まっています。許可が要る業種では、こちらのほうが会社への影響が大きくなります。

建設業がその例です。国土交通省の「許可の要件」は、欠格要件に「破産者で復権を得ないもの」を挙げ、法人の役員等の中にこれに当たる人がいると許可しないとしています。北海道の「既に建設業の許可を受けている方へ」は、欠格要件に該当するに至ったときは事実が起きてから2週間以内の届出が要る事項に挙げています。

つまり、社長が破産して復権するまでのあいだ取締役に戻ると、会社の許可を続けられなくなるおそれがあります。許可を守るには、復権まで社長以外の人が役員を務める形を考えることになります。どの形なら許可を続けられるかは、許可の窓口か行政書士に、破産の手続きに入る前に確かめてください。

復権は、免責許可の決定が確定したときなどに起きます。盛岡地方裁判所の破産(自己破産)の手続についての説明資料は、法律上の制限は免責許可決定が確定するか、開始決定から10年が経つと消えると説明しています。

許可が要るかどうかは、建設業に限りません。始めている事業の許可の手引きで、欠格要件に「破産者で復権を得ないもの」があるかを見てください。

会社のお金と社長のお金を分ける

社長個人が破産しても、会社の財産は会社のものです。ただし、社長と会社のあいだでお金のやりとりがあると、手続きの中で整理が必要になります。

社長と会社のあいだにあるもの 手続きで問題になること
社長が会社に貸したお金(役員借入金) 社長の財産として扱われ、会社が返済を求められることがある
会社が社長に貸したお金 会社は社長の債権者になる。会社の帳簿で隠さず整理する
社長が持っている会社の株式 社長の財産として扱われることがある
会社の借入に付けた社長の保証 社長の破産で社長個人の保証の責任は整理されうるが、会社の借入そのものは残る
社長の役員報酬 手続き中も受け取れるかどうか、いくらにするかは弁護士に確かめる

どれも、扱いは会社と社長の事情で変わります。この記事では判断できないので、この表を弁護士に見せて、自分の場合にどう扱われるかを聞いてください。

社長が破産を考える理由が会社の借入の保証なら、自己破産の前に経営者保証ガイドラインで保証を整理できないかも相談先に聞いてください。考え方は廃業と倒産の違いで触れています。

取引先・銀行・従業員への影響

破産の手続きでは、免責許可の決定などが官報に載ります(鹿児島地方裁判所の破産手続説明書)。取引先や銀行が官報を見ているかどうかは分かりませんが、知られる前提で準備しておくほうが安全です。

  • 会社の借入のある銀行。社長の保証が整理されると、銀行は会社の借入の条件を見直すかもしれません。社長の破産より先に、弁護士と一緒に銀行への説明を決めておいてください
  • 取引先。会社は続くので、契約の相手は変わりません。代表者が変わったことや選び直したことを、必要な相手に伝えてください
  • 従業員。会社が雇い主なので、社長の破産で雇用契約が終わるわけではありません。不安が広がらないよう、会社が続くことを先に伝えてください

会社で使っているクレジットカードが社長個人の名義なら、社長の破産で使えなくなると考えておいてください。事業の支払いの切り替え方は自己破産後のクレジットカードで、口座の扱いは破産後の口座開設と法人口座で整理しています。

よくある疑問

社長が破産したら、会社も破産しなければなりませんか

しなくてかまいません。会社と社長は別の人なので、社長個人の破産で会社の手続きが始まることはありません。ただし、会社の借入に社長の保証が付いている場合、社長の破産をきっかけに銀行が会社の借入の扱いを見直すことはありえます。

取締役を選び直すと、社長の破産の手続きに響きますか

会社法の上では、選び直すこと自体は認められています。手続きの中で、社長がいくら役員報酬を受け取るかや、会社とのお金のやりとりは説明が要ります。選び直す前に、依頼している弁護士に伝えてください。

社長以外の取締役が破産した場合はどうなりますか

同じように、その取締役は開始決定で退任します。定款などで決まっている取締役の人数を下回る場合は、選び直すか、新しい人を選びます。許可が要る業種では、役員の誰かが復権前なら許可に響くのも同じです。

破産が終わったあとに新しい会社を作れますか

作れます。手続き中と免責のあとでできることの違い、作ったあとの口座・カード・資金の準備は自己破産後でも会社は設立できるにまとめました。

参照資料と確認日

2026.10.02に確認。制度・費用・地域ごとの取扱いは変更されることがあります。本文中のリンクは該当する説明の出典です。