
この記事で分かること
- 相談・受任・申立て・開始決定は別の段階
- 会社の状況によって準備と換価にかかる時間が変わる
- 会社の手続き終了と個人の免責は別に確認する
法人破産は、弁護士に相談した日に始まり、その日のうちに会社の問題がすべて終わる、という手続きではありません。手続きは大きく分けて、相談、依頼と準備、裁判所への申立て、開始決定、管財人による処理、終了という段階で進みます。
期間を考えるときは「何か月で終わるか」だけでなく、営業をどうする日、申立てを目指す日、社長が対応する日を分けて確かめておきましょう。
法人破産の流れを6段階で見る
| 段階 | 主な内容 | 社長が準備すること・確かめること |
|---|---|---|
| 1. 相談 | 今の状況、続けるか整理するかの選択肢、急ぎの対応を考える | 資金・期限・借金・資産のおおまかな状況を伝える |
| 2. 依頼・申立て準備 | 契約を結び、資料を整理し、資産や関係者への対応の方針を決める | 必要な資料、費用、営業と通知の予定を確かめる |
| 3. 申立て | 裁判所に申立書と資料を出し、必要な費用を納める | 足りない資料や、追加の問い合わせに対応する |
| 4. 開始決定 | 裁判所が判断し、管財人を選任する | 管財人への引継ぎや面談などを行う |
| 5. 調査・換価・債権確認等 | 管財人が財産や取引を調べ、資産をお金に換えるなどの作業を進める | 記録や経緯の説明、指定された場への出席など |
| 6. 終了 | 配当をして終結するか、配当まで至らずに廃止などで終わる | どういう形で終わったかと、残っている個人の手続きなどを確かめる |
この表は一般的な流れです。実際の進み方は、裁判所や事件の内容によって変わります。裁判所の破産手続案内と、申立先の裁判所の案内を確かめてください。
相談・依頼の段階:営業と連絡の予定を決める
相談しただけでは、弁護士が代理人として動き始めるとは限りません。委任契約でどこまで頼むのか、いつから引き受けてもらうのかを確かめてください。
依頼したあとは、申立ての準備と並行して、営業をいつどうするかを考えます。従業員・取引先・家主などに、誰が何を伝えるかも決めておく必要があります。支払期限や現場の安全、預かっている品物、続いている契約などが関わるため、会社ごとの判断が欠かせません。
受任通知は必ずすぐ送られるわけではない
受任通知は、弁護士が依頼を受けたことを知らせる文書です。法人破産では、資産の保全や事業の状態などを見て、通知の方法と時期を決めます。そのため、「契約したらその日に全員へ通知」「通知後はあらゆる請求が必ず止まる」とは言い切れません。
依頼するときは、誰への連絡を事務所が引き受けるのかを聞いておきましょう。直接電話が来たときの答え方や、裁判所・税務署などから届く文書の送り先も、あわせて聞いておきます。
申立ての段階:資料と費用をそろえて裁判所へ
申立てには、会社の財産や借金、ここまでの経緯を示す資料が必要です。会社の資料が足りないと、取り寄せや整理に時間がかかります。初回相談に必要な書類を手がかりに、正式に何を出すかを相談先と確かめてください。
破産法22条は、裁判所が定める費用を申立人が予納する(前もって納める)よう求めています。費用を用意できるかどうかも日程に関わるので、見積の総額だけでなく、いつ何を納めるかを確かめておきましょう。具体的な内訳は法人破産の費用で説明しています。
申立てと開始決定は別のものです。提出したあとに、資料の追加や説明を求められることもあります。「提出予定日」と「開始決定の見込み」は分けて聞きましょう。
開始決定後:申立代理人と管財人は役割が違う
申立代理人は、会社が申立てなどを頼んだ弁護士です。破産管財人は裁判所が選任し、破産財団に属する財産を管理・処分します。自分で頼んだ弁護士が、そのまま自社の管財人になるわけではありません。
破産法78条により、開始決定のあとは、破産財団を管理・処分する権限を管財人だけが持ちます。社長がこれまでどおり自由に会社の設備を売ったり、売掛金の使い道を決めたりできるわけではありません。
管財人は、財産や借金、過去の取引を調べ、回収や換価などを進めます。会社の取締役などには破産について説明する義務があります(同法40条)。申立てのあとも、資料がどこにあるか、取引がどういう経緯だったかを説明できるようにしておいてください。
債権者集会と、手続きが終わるまで
管財事件では、管財人が状況を報告する債権者集会が開かれることがあります。出席が必要かどうかは、裁判所や代理人の指示を確かめてください。管財事件では原則として債権者集会を開く、というのが大阪地裁の倒産部案内の説明です。
配当できる財産があれば、債権の確認や配当などを経て終結します。手続きの費用をまかなう財産が足りない場合などは、異時廃止で終わることもあります。この「廃止」という言葉は、破産の申立てがなかったことになった、という意味ではありません。
お金に換えにくい資産や訴訟、取引の調査などが残っていれば、その分だけ時間がかかることがあります。債権者集会が1回なら必ず終わる、という約束もできません。
期間を左右するのは、どの作業が残っているか
期間の目安の一例として、たちばな総合法律事務所の解説は、申立てから法人破産の終結までを半年〜1年としています。これは同事務所の実務上の目安で、全国の平均を示す統計ではありません。相談から申立てまでの準備期間も、これとは別に考える必要があります。
この記事では、全国共通の「最短○日」「平均○か月」は示していません。会社の規模のほかに、次の事情で見通しが変わるためです。
| 期間に影響する事情 | 相談時に聞くこと |
|---|---|
| 帳簿や契約書が足りない | 何がそろえば申立てに進めるか。代わりになる資料はあるか |
| 費用の準備 | いつ、いくら必要か。日程と両立できるか |
| 不動産・在庫・売掛金など | 換価や回収に時間がかかりそうなものはどれか |
| 過去の取引や争い | 追加の調査や訴訟が見込まれるか |
| 従業員・賃貸借・拠点 | 整理や引継ぎのために先に決めることは何か |
「いつ終わりますか」に加えて、「現時点で期間を読めない理由は何ですか」「次に見通しを更新できるのはいつですか」と聞くと、予定を立てやすくなります。
代表者の自己破産も並行する場合
会社の手続きと社長個人の手続きは別です。会社の破産が終わっても、個人保証や個人の借入が自動的に免責されるわけではありません。個人の分は、免責許可が出て、それが確定したかを確かめる必要があります。
法人破産と社長の自己破産を同時に相談する場合では、会社用と個人用に分ける借金、資料、費用を説明しています。予定表も会社用と個人用の2つに分け、会社の手続きの終了と個人の免責を混同しないようにしましょう。
よくある疑問
弁護士に依頼したら、社長は何もしなくてよいですか
資料を出す、状況を説明する、必要な面談や集まりに出る、といったことは残ります。社長しか経緯を知らない取引もあるので、担当者と連絡が取れる状態にしておいてください。
申立てまで営業を続けられますか
売上・仕入れ・預かり金・契約の履行などによって判断が変わります。申立て予定日だけを基準に自分で決めず、続けた場合と止めた場合の影響を弁護士に相談しましょう。
どの時点で取引先に知らせればよいですか
知らせる相手・内容・時期は、代理人と決めます。特定の相手だけに支払いや資産の返却を約束する前に、代理人に確かめてください。まだ相談していないなら、相談先と準備の全体像から始められます。
参照資料と確認日
2026.09.17に確認。制度・費用・地域ごとの取扱いは変更されることがあります。本文中のリンクは該当する説明の出典です。


